夫婦そろって働いているのに、なぜか貯金が増えない。世帯収入は決して少なくないはずなのに、気づけば毎月のやりくりで精一杯。そんな悩みを抱える共働き世帯は少なくありません。
2025年の金融経済教育推進機構の調査によると、世帯年収1,000万円を超えていても預貯金がない家庭は約1割弱にのぼります。
収入が2本あるからこそ生まれる「油断」や「家計のブラックボックス化」が、貯金できない大きな要因になっているのです。この記事では、共働き夫婦が陥りやすい原因を整理し、今日から実践できる具体的な改善策をお伝えします。
共働きなのに貯金できない夫婦に共通する原因
共働き世帯は収入が2本あるため、本来なら貯金しやすい環境にあります。しかし、収入が多いからこそ見過ごしてしまう落とし穴が存在します。
ファイナンシャルプランナーへの相談事例を見ると、貯金できない共働き夫婦には共通したパターンがあることがわかります。ここでは、代表的な4つの原因を見ていきましょう。
夫婦それぞれの収支を把握していない家計のブラックボックス化
共働き夫婦に多いのが、お互いの収入や支出を把握できていない「家計のブラックボックス化」です。生活費の負担項目を分担していると、それぞれのお財布事情が見えにくくなります。
「自分はちゃんと貯めている」と思っていても、相手の貯蓄状況を知らなければ、世帯全体としていくら貯まっているのかがわかりません。共通口座に生活費を入れ、残りを各自で管理するスタイルでは、共通口座に入れるお金以外がすべてお小遣いとして消えてしまうケースも珍しくないのです。
「共働きだから大丈夫」という油断で使途不明金が増える
「2人で働いているんだから、多少使っても大丈夫だろう」という考えが、貯金できない最大の落とし穴です。専業主婦世帯と違い、共働き世帯はそれぞれに収入があるため、月々の生活費が足りなくなることはあまりありません。
だからこそ、危機感が薄れてしまいます。「パーキンソンの法則」という言葉をご存じでしょうか。これは「支出額は収入額に達するまで膨張する」という法則で、収入の増加分以上にお金を使い込んでしまう人が少なくないことを示しています。
キャッシュレス決済やクレジットカード払いが日常化すると、現金を見ずに買い物をする機会が増え、何にいくら使っているのかが見えにくくなります。サブスクなどの定期支払いも複数抱えていると、気づかぬうちに使途不明金が膨らんでいくのです。
住宅ローンや保険など収入に見合わない固定費を抱えている
共働き前提で組んだ住宅ローンや保険料が、家計を圧迫しているケースも多く見られます。「2人で稼いでいるから」と、収入に見合わない物件を購入したり、手厚すぎる保障の保険に加入したりしていませんか。
総務省の2024年の家計調査によると、二人以上世帯における住宅・土地のための負債は平均612万円で、負債全体の約92%を占めています。
産休や育休で一時的に収入が減る時期を考慮せず、共働き時の収入をベースに固定費を設定してしまうと、ライフステージの変化に対応できなくなります。
外食やコンビニ利用など無意識の出費が積み重なっている
共働き世帯は時間に追われることが多く、食事を外で済ませたり、コンビニで手軽に買い物を済ませたりする機会が増えます。1回あたりの金額は小さくても、積み重なれば大きな出費になります。
仕事を頑張ったご褒美として、ちょっと贅沢な食事やショッピングをする習慣がついている方もいるのではないでしょうか。こうした「プチ贅沢」が習慣化すると、毎月の支出額を把握しにくくなります。
コンビニで毎日500円使えば月に約15,000円、夫婦2人なら30,000円。外食を週2回するだけでも、自炊と比べて月に数万円の差が生まれます。無意識の出費こそ、家計を圧迫する見えない敵なのです。
共働き世帯の平均貯蓄額と目指したい貯金の目安
貯金を始める前に、まずは自分たちの立ち位置を確認しておきましょう。共働き世帯の平均貯蓄額を知ることで、目標設定がしやすくなります。
ここでは、年代別のデータと、無理のない貯金割合の目安を紹介します。
年代別に見る共働き世帯の貯蓄額データ
総務省が公表した2024年の家計調査によると、二人以上の勤労者世帯における貯蓄現在高の平均値は1,579万円です。ただし、これはあくまで平均値であり、貯蓄の多い世帯に引っ張られて高めに出る傾向があります。実態を知るには中央値を参考にするとよいでしょう。貯蓄保有世帯の中央値は947万円となっています。
世帯主の年齢階級別に見ると、40歳未満の世帯の貯蓄現在高は867万円、40〜49歳は1,314万円、50〜59歳は1,798万円です。年齢が上がるにつれて貯蓄額が増えていますが、同時に40歳未満・40〜49歳の世帯では負債現在高が貯蓄現在高を上回っており、住宅ローンなどの影響で「負債超過」の状態にあることがわかります。
手取り収入に対する理想の貯金割合と無理のない金額設定
「毎月いくら貯金すればいいの?」という疑問を持つ方は多いでしょう。一般的な目安として、手取り収入の10〜20%を貯金に回すことが推奨されています。
ただし、これはあくまで目安です。住宅ローンの有無、子どもの人数、居住地域によって適正な割合は変わります。最初から高い目標を設定すると、生活が苦しくなって挫折する原因になります。
大切なのは、まず5%からでもいいので始めること。たとえば世帯の手取り月収が50万円なら、月2.5万円からスタートします。家計に余裕が出てきたら、徐々に割合を上げていけばよいのです。
生命保険文化センターの情報によると、共働き世帯の家計収支を見ると、世帯主のみが働く世帯より月に約6万円多く黒字が出る傾向があります。この差額を貯金に回せれば、年間で約72万円の資産形成が可能です。
お金が貯まる共働き夫婦の家計管理パターン
共働き夫婦の家計管理方法は大きく3つに分かれます。どれが正解というわけではなく、夫婦のライフスタイルや価値観に合った方法を選ぶことが大切です。
それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで、自分たちに合うパターンを見つけましょう。
収入を合算して一括管理するお小遣い制
2人の収入をすべて合算し、そこから生活費と貯蓄を先に取り、残りを夫婦それぞれのお小遣いにする方法です。
この方法の最大のメリットは、家計全体の把握がしやすいこと。収入と支出がすべて見える化されるため、計画的な貯蓄がしやすくなります。また、無駄遣いを減らしやすいというメリットもあります。
一方で、お小遣い制に抵抗を感じる人もいるでしょう。自分で稼いだお金を自由に使えないストレスや、管理する側・される側という立場の違いが不満につながることもあります。
この方法が向いているのは、夫婦どちらかが家計管理を得意としていて、もう一方がそれに納得している場合です。月末に家計状況を共有する習慣をつければ、お互いの不満も溜まりにくくなります。
一定額を共通口座に入れて残りを各自で管理する分担制
毎月決まった金額を共通口座に入れ、生活費や貯蓄はそこから支払い、残りは各自で自由に使う方法です。共働き夫婦に多いパターンといわれています。
メリットは、プライベートな支出を干渉されないこと。それぞれの収入に応じて負担額を決められるため、公平感も保ちやすいでしょう。
ただし、注意点もあります。共通口座に入れるお金以外が「見えないお金」となり、世帯全体の貯蓄額が把握しにくくなることです。また、収入が変わったときに負担割合を見直さないと、不公平感が生まれます。
片方の収入だけで生活しもう一方を全額貯蓄に回す方法
夫婦どちらかの収入だけで生活費をまかない、もう一方の収入は全額貯蓄に回す方法です。この方法は、最も貯蓄スピードが速くなります。
仮に妻の手取り月収が25万円だとすると、年間で300万円の貯蓄が可能です。5年で1,500万円、10年で3,000万円と、大きな資産を築けます。
この方法のメリットは、産休・育休で片方の収入がなくなっても生活水準を維持できること。将来の備えとしても心強いでしょう。
ただし、生活費を負担する側の金銭的・精神的負担が大きくなりがちです。また、収入差が大きい場合は、この方法が難しいこともあります。
どの方法を選ぶにしても、夫婦で定期的に家計状況を共有することが成功の鍵です。
今日から始められる家計改善の具体的なステップ
貯金体質に変わるためには、具体的なアクションが必要です。ここからは、今日から実践できる家計改善のステップを順を追って解説します。
難しいことはありません。一つずつ取り組んでいきましょう。
収入と支出を書き出して家計を見える化する
家計改善の第一歩は、現状を知ることです。毎月の収入と支出を書き出し、何にいくら使っているかを把握しましょう。
家計簿をつけるのが面倒であれば、スマホの家計簿アプリを活用するのも手です。銀行口座やクレジットカードと連携すれば、自動で支出が記録されます。1円単位で合わせる必要はなく、大まかな流れをつかむことが目的です。
夫婦で家計簿アプリを共有すれば、お互いの支出状況をリアルタイムで確認できます。「何にいくら使っているのかわからない」という不安も解消されるでしょう。
給料日に自動で移動させる先取り貯蓄を設定する
「余ったら貯金しよう」という考えでは、いつまで経っても貯まりません。貯金の基本は先取りです。給料が入ったら、使う前に一定額を貯蓄用口座に移しましょう。
多くの銀行では定額自動振替サービスを提供しています。給料日の翌日に自動で貯蓄用口座に振り替える設定をすれば、手間なく先取り貯蓄ができます。
また先取りで積み立てる設定にすることで、手動管理に頼らず、確実に貯める仕組みが作れます。
最初の金額は無理のない範囲で設定することが大切です。生活が苦しくなって貯蓄を取り崩してしまっては本末転倒。まずは月1万円からでも、始めることに意味があります。
固定費を項目ごとに見直して削減する
固定費の見直しは、一度やれば効果が継続するため、費用対効果が高い節約方法です。特に通信費、保険料、サブスクの3つは、見直し余地が大きい項目です。
スマホやネット回線のプラン変更と格安SIMの検討
スマホ代は、大手キャリアから格安SIMに乗り換えるだけで大幅に削減できます。総務省の2021年「携帯電話の料金等に関する利用者の意識調査」によると、携帯電話会社への通信料金の毎月の支払い平均額は約3,300円ですが、格安SIMなら月額1,000円以下に抑えることも可能です。
たとえば、日本通信SIMの「合理的シンプル290プラン」は月額290円(1GB)から利用できます。通話定額も組み合わせて運用できるプランもあります。
夫婦2人で大手キャリアを使っていて月々15,000円払っているなら、格安SIMへの乗り換えで月10,000円以上の節約も夢ではありません。年間で12万円以上の差になります。
保険の保障内容を確認して重複を整理する
結婚前から加入していた保険をそのまま継続していませんか。夫婦それぞれが同じような保障内容の保険に入っていると、無駄が生じます。
医療保険に夫婦で加入している場合、保障内容が重複していないか確認しましょう。また、死亡保障は共働きなら最低限で済むケースもあります。保険の見直しだけで月に数千円から1万円程度削減できることは珍しくありません。
使っていないサブスクを解約する
動画配信サービス、音楽配信、ジム、オンラインストレージなど、気づけばサブスクが増えていませんか。月額500円でも、使っていないサービスに年間6,000円払っていることになります。
クレジットカードの明細を確認し、毎月引き落とされているサービスをリストアップしましょう。3カ月以上使っていないサービスは、思い切って解約することをおすすめします。
変動費は月の予算を決めて使いすぎを防ぐ
食費や日用品、娯楽費などの変動費は、月の予算を決めてその範囲内でやりくりする習慣をつけましょう。予算を決めないままカードで支払っていると、使いすぎに気づきにくくなります。
固定費以外の出費はあらかじめ予算を決め、カードの上限枠を作っておくと、お金の管理がシンプルになります。
予算を週単位で分けて管理するのも効果的です。月の食費予算が4万円なら、週1万円。週初めにその金額をお財布に入れ、その範囲でやりくりする習慣をつけましょう。
夫婦でお金の話し合いを円滑に進めるコツ
家計改善を成功させるには、夫婦間のコミュニケーションが欠かせません。しかし、お金の話はなかなか切り出しにくいもの。ここでは、スムーズに話し合いを進めるためのコツを紹介します。
共通の貯金目標と家計ルールを一緒に決める
まずは夫婦で「何のために、いくら貯めるか」を話し合いましょう。マイホームの頭金、子どもの教育費、老後資金など、具体的な目標があると貯蓄のモチベーションが上がります。
お金が貯まりやすい夫婦は、将来のライフプランを具体化し、それを夫婦で共有しているという共通点があります。目標が明確なほど、日々の節約も苦になりにくいのです。
また、日常的なお金のルールも決めておきましょう。「3万円以上の買い物は事前に相談する」「毎月の貯蓄額は○万円」など、シンプルなルールを設けることで、お金に関するトラブルを防げます。
支出の役割分担と管理の担当を明確にする
誰がどの支出を負担するか、誰が家計管理の主担当になるかを明確にしておきましょう。曖昧なままだと、「相手が払ってくれると思っていた」という行き違いが生じます。
家計の管理方法として、生活費と貯蓄を夫婦で分けて担当するやり方もあります。一方が日常の支出を見て、もう一方が貯蓄や投資を担います。
月に一度は家計の進捗を振り返る時間をつくる
家計管理は、一度ルールを決めたら終わりではありません。月に一度、夫婦で家計の進捗を振り返る時間をつくりましょう。
「今月は予算内に収まった」「外食費がオーバーした」など、事実を共有するだけでOKです。責めるのではなく、一緒に改善策を考えるスタンスが大切です。
忙しい共働き夫婦には、月末や月初の週末30分だけでも話し合う時間を設けることをおすすめします。家計簿アプリのグラフを見ながら話すと、視覚的にわかりやすくなります。
貯金を長続きさせるために意識したいこと
せっかく始めた貯金も、続かなければ意味がありません。最後に、貯金を習慣化し、長く続けるために意識したいポイントをお伝えします。
教育費や老後資金など将来の大きな支出から逆算して計画を立てる
漠然と「貯金しよう」と思うだけでは、なかなかモチベーションが続きません。教育費や老後資金など、将来確実に必要になるお金から逆算して計画を立てましょう。
教育資金の目安として、大学入学までに子ども1人あたり300〜600万円程度は必要でしょう。老後資金は、公的年金だけでは毎月数万円の赤字になることが多く、2,000万円程度の準備が目安と言えるでしょう。
たとえば、10年後に600万円貯めたいなら、月5万円の積立が必要です。目標金額と期限が明確になれば、毎月の貯蓄額も自動的に決まります。
教育費と老後資金の準備時期が重なるため、どちらか一方ではなく、両方を同時に準備することが大切です。
ライフステージの変化に合わせて定期的に家計を見直す
結婚、出産、子どもの進学、転職、昇給など、ライフステージが変われば収入も支出も変わります。一度決めた家計ルールを固定せず、定期的に見直しましょう。
また、子どもの成長に伴い教育費は増えていきます。習い事や塾代など、年齢とともに増える支出を見越して、定期的に予算を見直すことが大切です。
半年に一度、あるいは年に一度は「家計の健康診断」として、収支バランスや貯蓄ペースをチェックする時間をつくりましょう。そうすることで、大きなトラブルになる前に軌道修正ができます。
