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パートは社会保険料がいくら引かれる?

共働き世帯で扶養内のパート勤務を検討している方や、フルタイムへの転換を考えている主婦の皆さんは、給与から差し引かれる社会保険料の金額が気になりますよね。

社会保険料は健康保険料と厚生年金保険料で構成され、月収によって控除額が変わってきます。

例えば月収10万円の場合、健康保険料と厚生年金保険料を合わせて約13,800円が給与から引かれることになります。

社会保険の加入条件は、週20時間以上かつ月額賃金8.8万円以上が基本となっており、2024年10月からは従業員101人以上の企業で働くパート社員も新たに加入対象となります。

記事では月収別の控除額シミュレーションや、扶養の範囲内で働くためのポイント、加入のメリットまで詳しく解説していきましょう。

将来の年金受給や医療保障を考えると、社会保険料の負担は必要な支出かもしれません。手取り収入を最大化しながら、ご自身に合った働き方を見つけるためのヒントをご紹介しています。

 パート社員の社会保険料を解説

パート社員の社会保険料について、具体的な計算方法から近年の制度変更まで詳しく解説します。

社会保険料は給与から天引きされる重要な支出項目で、健康保険料と厚生年金保険料で構成されています。

加入条件は、週20時間以上就労かつ月額賃金8.8万円以上が基本要件となります。料率は全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合、労使折半で健康保険料が約10%、厚生年金保険料が18.3%です。

事業所の規模や勤務時間によって加入要件が異なるため、正確な保険料額を把握することが重要です。なお、2024年10月からは適用拡大により、より多くのパート社員が社会保険の対象となる見込みです。

 社会保険料の基本

社会保険料は、給与支給額をそのまま計算の基礎とするのではなく、標準報酬月額に保険料率を掛けて算出します。

パート社員の場合も正社員と同様の計算方法が適用され、労使で折半する仕組みとなっています。健康保険料率は都道府県ごとに異なり、例えば東京都の場合は9.81%(2024年4月現在)です。

厚生年金保険料率は全国一律で18.3%となっています。
これらの保険料は毎月の給与から天引きされ、事業主負担分と合わせて保険者に納付されます。

料率は定期的に見直されるため、最新の情報に注意を払う必要があります。

 標準報酬月額とは

標準報酬月額は、実際の給与額を一定の幅で区分し、その中間の額を保険料計算の基準とする制度です。

給与額は1,000円単位で切り捨てた後、決められた等級表に当てはめます。例えば、実際の給与が88,000円から93,000円の場合、標準報酬月額は88,000円となります。
この仕組みにより、毎月の給与が多少変動しても、保険料額が安定します。

新規加入時は、見込み収入を基準に決定され、その後は年に一度の定時決定で見直されます。
固定的賃金が変動した場合は随時改定の対象となり、標準報酬月額が変更される場合もあります。

 保険料率の仕組み

社会保険料率は、健康保険と厚生年金保険それぞれに設定されています。

健康保険料率は加入する保険者によって異なり、協会けんぽの場合は都道府県別に設定されています。

例えば、東京都の場合は被保険者負担分が4.905%、事業主負担分が4.905%です。

一方、厚生年金保険料率は全国一律で、被保険者と事業主がそれぞれ9.15%ずつ負担します。
介護保険料は40歳以上65歳未満の場合に加算され、2024年度は1.82%です。これらの料率は経済状況や医療費の動向に応じて見直されることがあります。

 月収別のシミュレーション

月収によって社会保険料の具体的な金額は大きく変わります。

実際の計算例を見ていくことで、自身の収入に対する保険料負担の目安を把握できます。計算には標準報酬月額を基準とし、そこから健康保険料と厚生年金保険料を算出します。

また、40歳以上の場合は介護保険料も加算されることに注意が必要です。
シミュレーションでは東京都の協会けんぽの料率を使用していますが、実際の保険料は加入している健康保険組合や居住地域によって異なる場合があります。

 月収8万8000円の場合

月収88,000円の場合、標準報酬月額も88,000円となります。

この場合の社会保険料を計算すると、健康保険料は月額4,316円(88,000円×9.81%÷2)、厚生年金保険料は8,052円(88,000円×18.3%÷2)となります。

したがって、合計で12,368円が毎月の給与から天引きされます。40歳以上65歳未満の場合は、これに介護保険料1,601円(88,000円×3.64%÷2)が追加されます。

この収入帯は社会保険の適用対象となる最低ラインに近い水準であり、扶養控除の範囲内で働きたい場合は注意が必要です。

 月収10万円の場合

月収100,000円の場合、標準報酬月額は98,000円となります。

健康保険料は月額4,807円(98,000円×9.81%÷2)、厚生年金保険料は8,967円(98,000円×18.3%÷2)で、合計13,774円が控除されます。

40歳以上の場合は介護保険料1,783円(98,000円×3.64%÷2)が加算されます。この収入水準では、社会保険料控除後の手取り額は約86,000円となり、扶養範囲内で働く場合の上限に近づきます。

月々の収入を調整する際は、賞与なども含めた年収ベースでの管理が重要です。

 月収12万円の場合

月収120,000円の場合の標準報酬月額は118,000円です。

健康保険料は月額5,787円(118,000円×9.81%÷2)、厚生年金保険料は10,797円(118,000円×18.3%÷2)となり、合計16,584円が控除されます。

40歳以上の場合は介護保険料2,147円(118,000円×3.64%÷2)が追加されます。この収入帯になると、配偶者の扶養から外れる可能性が高くなります。
ただし、健康保険の被扶養者認定は年収130万円未満という基準があるため、収入管理には細心の注意が必要です。

 社会保険加入のメリット

社会保険への加入は保険料負担が発生する一方で、将来的な保障や各種給付金の受給資格が得られるという大きなメリットがあります。

長期的な視点で見ると、医療費の自己負担軽減や年金受給額の増加など、様々な面でメリットを享受できます。

特に、病気やケガで働けなくなった場合の傷病手当金や、出産時の出産手当金など、予期せぬ事態に対する経済的な保障が得られます。

 年金受給額アップ

社会保険に加入することで、将来受け取る年金額が増加します。

厚生年金は国民年金に上乗せされる形で支給され、加入期間と標準報酬月額に応じて受給額が決定されます。
例えば、月収10万円で20年間加入した場合、年間約24万円の年金額増加が見込まれます。また、遺族年金や障害年金の受給資格も得られ、不測の事態に対する備えとなります。

加入期間が長いほど受給額は増加するため、早期からの加入が推奨されます。

 医療保険の充実

健康保険に加入することで、医療費の自己負担が30%に抑えられます。

また、高額療養費制度により、月々の医療費が一定額を超えた場合は超過分が払い戻されます。さらに、人間ドックや各種健診の費用補助を受けられる場合もあります。

特に、重い病気や長期の治療が必要になった場合、医療費の自己負担を大きく軽減できます。加えて、家族が被扶養者となることで、家族の医療保障も充実します。

 各種手当金の受給資格

社会保険の加入者は、様々な手当金を受給する資格が得られます。

病気やケガで働けない場合は、標準報酬日額の3分の2相当額が最長1年6ヶ月まで支給される傷病手当金を受け取れます。

出産の場合は、産前産後各42日間の出産手当金が支給されます。また、出産育児一時金として42万円(2024年4月現在)が支給されます。これらの給付は、予期せぬ収入減少や支出増加に対する重要な経済的支援となります。

 2024年10月からの制度変更

2024年10月から社会保険の適用拡大が実施され、より多くのパート社員が加入対象となります。

この制度変更は、働き方の多様化に対応し、より多くの労働者の将来的な保障を充実させることを目的としています。

適用拡大により、従業員規模100人超の企業で働くパート社員も、一定の要件を満たせば社会保険に加入することが必要となります。

この変更は、将来の年金受給額の増加や医療保障の充実につながる一方で、手取り収入の減少も伴うため、十分な理解と準備が必要です。

 適用拡大の対象企業

2024年10月からは、従業員101人以上の企業に勤務するパート社員が新たに社会保険の適用対象となります。

これは、2016年10月から段階的に進められてきた適用拡大の最終段階です。対象となる企業は、正社員とパート社員を合わせた総従業員数で判断されます。

ただし、従業員数が100人以下になった場合でも、一度適用拡大の対象となった企業は、引き続き社会保険の適用義務が継続します。企業側は、対象となるパート社員を適切に把握し、必要な手続きを行う必要があります。

 新たに加入対象となる人

社会保険の加入要件は、①週の所定労働時間が20時間以上、②月額賃金が8.8万円以上、③勤務期間が2ヶ月を超えて見込まれる、④学生でない、という条件を満たす必要があります。

これらの条件は従来と変わりませんが、適用対象企業の範囲が拡大することで、より多くのパート社員が加入対象となります。

特に、複数の事業所で働く場合は、労働時間を合算して20時間以上となる場合も加入対象となる可能性があります。新たに対象となる方は、収入や労働時間の調整を検討する必要があります。

 手取り減少への対策

社会保険料の負担により手取り収入が減少することへの対策として、いくつかの選択肢があります。

給与水準の見直しや労働時間の調整、また企業が利用できる助成金制度の活用などが考えられます。

特に、キャリアアップ助成金は、社会保険適用による負担増を軽減する有効な手段となります。また、労働時間の調整により、扶養の範囲内で働き続けることも可能です。

 キャリアアップ助成金活用

キャリアアップ助成金は、社会保険の適用拡大に伴い、事業主が負担する保険料の一部を助成する制度です。

短時間労働者の社会保険適用促進コースでは、有期雇用労働者等を新たに社会保険に加入させた場合、従業員1人当たり最大38.5万円(生産性要件を満たした場合)が支給されます。

この助成金を活用することで、企業は保険料負担を軽減でき、結果として従業員の給与水準を維持しやすくなります。申請には一定の要件があり、計画的な準備が必要です。

 労働時間の調整方法

労働時間を調整することで、社会保険料の負担を管理する方法があります。

週の所定労働時間を20時間未満に設定することで、社会保険の適用を回避できます。ただし、この場合は月々の収入も減少するため、生活設計全体を見直す必要があります。

また、労働時間の調整を行う際は、雇用主との十分な話し合いが必要です。突然の労働時間削減は業務に支障をきたす可能性があるため、計画的な調整が望ましいです。

なお、実態の労働時間が20時間以上である場合は、所定労働時間を低く設定しても社会保険の適用対象となる場合があります。

 パートの社会保険料に関するよくある疑問と回答

パート社員の社会保険加入に関しては、様々な疑問や不安を抱えている方が多いようです。

特に、扶養の範囲内で働き続けたい場合の収入管理方法や、加入要件に関する具体的な質問が多く見られます。

また、社会保険料の負担を避けたい場合の対応策についても関心が高くなっています。これらの疑問に対して、法令や制度に基づいた正確な情報を提供することが重要です。

 扶養の範囲内で働くには

扶養の範囲内で働くためには、年収130万円未満(60歳以上または障害者の場合は年収160万円未満)を維持する必要があります。

具体的な管理方法としては、月収を調整する以外に、賞与の支給額にも注意を払う必要があります。また、労働時間を週20時間未満に抑えることで、社会保険の適用を避けることができます。

ただし、複数の事業所で働く場合は、合算した収入と労働時間で判断されます。
年間の収入見込みを立て、毎月の収入を均等に配分することで、年収管理を計画的に行うことができます。

 加入を避ける方法はある?

社会保険の加入を避けるための合法的な方法としては、週の所定労働時間を20時間未満に抑えること、または月額賃金を8.8万円未満に調整することが挙げられます。

ただし、これらの調整は必ず雇用主との合意のもとで行う必要があります。また、実際の労働実態が加入要件を満たす場合は、契約上の労働時間や賃金を低く設定しても、社会保険の適用対象となります。

加入回避を目的とした不適切な労働条件の変更は法令違反となる可能性があるため、慎重な判断が必要です。むしろ、社会保険加入によるメリットを十分に理解し、将来の経済的保障として活用することを検討するのが望ましいでしょう。

【出典】
日本年金機構「保険料額表」
厚生労働省「標準報酬月額の決め方」
全国健康保険協会「都道府県別保険料率」
日本年金機構「標準報酬月額等級表」
厚生労働省「社会保険の適用要件」
厚生労働省「キャリアアップ助成金」
日本年金機構「被扶養者の認定基準」
厚生労働省「社会保険の適用拡大について」
厚生労働省「年金額の計算方法」

監修者
小林綾乃

小林綾乃

大学卒業後、銀行に入行。事務職を経て、約14年間、個人向けの資産運用コンサルティング業務に従事。
その後、銀行系証券会社へ出向し約2年間、資産運用コンサルティング業務に従事。
中立的な立場からお客様の豊かな人生に役立つご提案をしたいと思い、現職であるバリューアドバイザーズに入社。

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