2024.12.03
年金は繰り上げと繰り下げのどっちの受け取り方がお得?
年金の受給開始年齢は、個人の生活設計や経済状況によって柔軟に選択できます。
繰り上げと繰り下げの選択は、将来の経済的安定に大きな影響を与えるため、慎重に検討する必要があります。
この記事では、繰り上げ受給と繰り下げ受給それぞれのメリットとデメリットを詳しく解説し、自分に合った最適な選択肢を見つける方法を提案します。
年金制度は複雑で、個人の状況によって最適な選択が異なるため、一概にどちらがお得とは言えません。
しかし、ライフプランや健康状態、経済状況を考慮し、十分な情報を得た上で判断することが重要です。以下では、繰り上げと繰り下げのそれぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
年金受給の基本知識
年金制度は私たちの老後の生活を支える重要な社会保障制度です。
日本の年金制度は、国民年金と厚生年金の2つの柱で構成されています。
国民年金は全ての国民が加入する基礎年金であり、厚生年金は会社員や公務員が加入する年金制度です。
国民年金は20歳から60歳までの全ての人が加入し、定額の保険料を納付します。
一方、厚生年金は給与に応じた保険料を納付し、その半額を事業主が負担します。受給開始年齢は原則65歳ですが、個人の事情に応じて繰り上げや繰り下げが可能です。
年金の繰り上げ受給の特徴
繰り上げ受給とは、本来の支給開始年齢である65歳よりも早く年金を受け取り始めることを指します。
60歳から受給を開始することができ、1か月繰り上げるごとに0.4%減額されます。
例えば、60歳で受給を開始すると、生涯にわたって年金額が30%減額されることになります。
繰り上げ受給のメリットは、早い段階から年金を受け取れることです。
退職後すぐに安定した収入源が必要な場合や、60代前半の生活資金が不足している場合に有効な選択肢となります。また、短命の家系や持病がある場合、早めに年金を受け取ることで総受給額を増やせる可能性があります。
一方、デメリットとしては生涯にわたって減額された年金額が続くことが挙げられます。
さらに、繰り上げ受給を選択すると、その後の取り消しや繰り下げへの変更ができないため、慎重な判断が求められます。また、在職老齢年金の仕組みにより、就労収入と年金の合計額が一定以上になると年金が支給停止される可能性もあります。
繰り上げ受給の詳細な計算方法や注意点については、日本年金機構のウェブサイトで確認できます。
年金の繰り下げ受給の特徴
繰り下げ受給とは、65歳以降に年金の受給開始を遅らせることを指します。
1か月繰り下げるごとに0.7%増額され、最大70歳まで繰り下げることができます。
70歳まで繰り下げた場合、年金額は42%増額されます。
繰り下げ受給のメリットは、生涯にわたって増額された年金を受け取れることです。
健康で長生きが期待できる場合や、65歳以降も就労を続ける予定がある場合に有効な選択肢となります。また、将来のインフレリスクに備えるという観点からも、繰り下げ受給は魅力的です。
デメリットとしては、65歳から70歳までの間、年金を受け取らないため、その期間の生活資金を別途用意する必要があることが挙げられます。
また、健康上の理由や予期せぬ事態により、繰り下げ期間中に十分な年金を受け取れなくなるリスクもあります。
年金の繰り上げと繰り下げどちらが得か?
繰り上げ受給と繰り下げ受給のどちらが得かを判断するには、年金額の比較だけでなく、個人の健康状態やライフプランを総合的に考慮する必要があります。
年金額の比較では、繰り下げ受給のほうが有利に見えます。
例えば、65歳時点で年間200万円の年金を受け取る場合、60歳で繰り上げると年間140万円、70歳まで繰り下げると年間284万円となります。しかし、この単純比較だけでは不十分です。
健康状態とライフプランの考慮が重要です。
平均寿命や家族の寿命傾向、現在の健康状態、今後の就労予定、貯蓄状況、生活スタイルなどを総合的に判断する必要があります。
例えば、健康に不安がある場合は繰り上げ受給を、長寿が期待できる場合は繰り下げ受給を選択するといった具合です。
損益分岐点についても考慮が必要です。
繰り上げ受給と通常受給の損益分岐点は約80歳、繰り下げ受給と通常受給の損益分岐点は約85歳とされています。
つまり、80歳以前に亡くなる可能性が高いと考えられる場合は繰り上げ受給、85歳以降まで生きる可能性が高いと考えられる場合は繰り下げ受給が有利となります。
ただし、これらの数字はあくまで目安であり、個人の状況によって大きく異なることに注意が必要です。詳細なシミュレーションについては、ファイナンシャルプランナーや年金事務所に相談することをお勧めします。
まとめと今後の選択肢
年金の受け取り方を選ぶ際には、自分の状況に合った方法を慎重に検討することが重要です。
そのために必要なのは、まず自身の健康状態や家族の平均寿命などを考慮し、どのくらいの期間年金を受け取る可能性があるかを見積もることです。
次に、現在の貯蓄状況や今後の収入見込み、生活スタイルなどを踏まえて、老後に必要な生活費を算出します。
これらの情報を基に、繰り上げ受給、通常受給、繰り下げ受給それぞれのケースで総受給額のシミュレーションを行います。日本年金機構の「ねんきんネット」では、自身の年金見込み額を確認できるほか、繰り上げ・繰り下げ受給した場合の金額も試算できます。
また、年金だけでなく、その他の資産形成の方法についても考える必要があります。
例えば、2024年に始まった新NISA(少額投資非課税制度)は、長期的な資産形成に有効なツールとして注目されています。
新NISAでは、年間120万円まで、最長20年間にわたって投資信託などの運用益が非課税となります。
このような制度を活用しつつ、リスクとリターンのバランスを考慮した資産運用を行うことで、年金と併せてより安定した老後の生活設計が可能になります。
ただし、投資には常にリスクが伴うため、自身の知識や経験、リスク許容度に応じた慎重な判断が求められます。
年金制度や資産運用の知識を深めることが重要です。
金融庁や日本年金機構のウェブサイト、信頼できる金融機関の情報などを参考にしつつ、必要に応じてファイナンシャルプランナーなどの専門家にも相談することをお勧めします。
自身の状況に最適な選択をすることで、より安心で豊かな老後生活を実現できるでしょう。

小林綾乃
大学卒業後、銀行に入行。事務職を経て、約14年間、個人向けの資産運用コンサルティング業務に従事。
その後、銀行系証券会社へ出向し約2年間、資産運用コンサルティング業務に従事。
中立的な立場からお客様の豊かな人生に役立つご提案をしたいと思い、現職であるバリューアドバイザーズに入社。