2020.12.13
資産運用② S&P500は資産運用に最適なのか?
本コラムでは、最近問い合わせが増えているS&P500での運用について、長期の資産形成を考えるうえでどのような特徴があるのかを検証してみました。
結論からいうと、「20年以上の長期運用であれば過去のデータ上、損失となったことはない」という事実があるに過ぎません。つまり、これだけでは資産運用が成功するとは断言できません。
そもそもS&P500とは?
S&P500(エスアンドピーゴヒャク)とは、米国のS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスLLCが公表している、米国を代表する株価指数の一つです。ニューヨーク証券取引所やナスダックなど、米国の主要株式市場に上場する約500社の銘柄で構成されており、米国市場全体の動きを表す指数として世界中の投資家から注目されています。
構成銘柄に組み入れられるには、次のような厳格な基準があります。
- 米国企業であること
- 時価総額が一定以上であること
- 四半期連続で黒字利益を維持していること
上記のような基準があります(出典:S&P Dow Jones Indices「S&P U.S. Indices Methodology」)。マイクロソフト・アップル・エヌビディアといったグローバル企業が上位を占めており、テクノロジー・金融・ヘルスケアなど幅広い業種をカバーしているのが特徴です。
投資信託として運用されるS&P500が投資家に注目される理由として大きいのは、米国経済の高い成長力です。米国のGDPは世界全体の約4分の1を占めており(出典:IMF「World Economic Outlook Database 2024」)、リーマンショックやコロナショックといった大きな下落局面を繰り返し乗り越えながら、長期では右肩上がりの成長を続けてきました。日経平均と比較しても、その成長差は歴然としています。こうした実績が、「米国株に投資するなら投資信託のS&P500」という認識を広める一因となっています。
ただし、注目度が高いからといって「誰でも必ず資産が増える」わけではありません。以下では、その具体的な理由を年代別データと合わせて見ていきます。
年代別トータルリターンで見るS&P500の実態
まず、年代別にトータルリターンを見ていきましょう(毎月の平均終値をベースにトータルリターンを算出)。

(作成)https://www.multpl.com/inflation-adjusted-s-p-500
| 年代 | トータルリターン |
|---|---|
| 1900年代 | +58.28%(1900年〜1909年の年間騰落率を合計) |
| 1910年代 | -5.53%(1910年〜1919年の年間騰落率を合計) |
| 1920年代 | +134.76%(1920年〜1929年の年間騰落率を合計) |
| 1930年代 | -13.94%(1930年〜1939年の年間騰落率を合計) |
| 1940年代 | +32.15%(1940年〜1949年の年間騰落率を合計) |
| 1950年代 | +147.59%(1950年〜1959年の年間騰落率を合計) |
| 1960年代 | +65.97%(1960年〜1969年の年間騰落率を合計) |
| 1970年代 | +11.92%(1970年〜1979年の年間騰落率を合計) |
| 1980年代 | +117.81%(1980年〜1989年の年間騰落率を合計) |
| 1990年代 | +166.46%(1990年〜1999年の年間騰落率を合計) |
| 2000年代 | -18.27%(2000年〜2009年の年間騰落率を合計) |
| 2010年代 | +122.87%(2010年〜2019年の年間騰落率を合計) |
確かに1920年代・1950年代・1980年代・1990年代・2010年代は10年間のトータルリターンが+100%を超えています。しかし、年代によって予想以上にトータルリターンが大きく異なることがわかります。
ここでイメージしていただきたいのが、ご自身のライフプランです。
- 大学費用:10年後に子供の学費を工面したい
- 老後費用:20年後に豊かな老後生活のために運用をしたい
- 事業運営:経営がうまくいかないときがあれば一部資金を取り崩せるようにしたい
資産運用の目的は人によってさまざまです。その目的を実現するために資産運用をおこなうことは大前提ですが、選んだ商品がどのくらい変動するのか、この変動幅を、金融の世界では「リスク」と呼びます。
1900年から2019年までで一年間の最大上昇率は+48.34%、一年間の最大下落率は−48.06%です。ちなみに、世界恐慌後(1930年〜1932年)の合計騰落率は−87.12%、ITバブル崩壊後(2001年〜2003年)の合計騰落率は−42.37%、リーマンショックが起こった2009年の年間騰落率は−37.22%でした。このように、短期では大きなダメージを受けることも珍しくありません。
投資信託で運用成果を上げるために知っておきたいリスクと注意点
S&P500をはじめとする投資信託には、預貯金とは根本的に異なるリスクがあります。運用前にしっかり理解しておきましょう。
元本割れとなるリスクは常にある
投資信託は元本が保証されておらず、投資先の株式や債券の価格が下がれば、購入した金額を下回る「元本割れ」が起こる可能性があります。「長期なら損しない」という言葉を聞くことがありますが、それはあくまで過去のデータに基づく傾向であり、将来を約束するものではありません。
株価変動リスク(価格変動リスク)
投資信託のS&P500は米国の約500社で構成される指数に連動するため、米国経済の好不調が直接リターンに影響します。過去にはリーマンショックやコロナショックのような急落局面もあり、短期間で資産が大幅に目減りするリスクは常に存在します。また、現在は高成長を続ける米国も、将来的に経済成長が鈍化したり、他国に経済力を追い抜かれる可能性も否定できません。
為替変動リスク
投資信託のS&P500は米国株式に投資するため、円とドルの為替レートの影響を受けます。たとえ株価が上昇していても、購入時と比較して円高が進んでいれば、円換算での資産は目減りします。経済情勢や各国の金融政策の変化によって為替は大きく動くため、注意が必要です。
短期的なハイリターンを狙いすぎない
ハイリターンを狙える商品は、それだけ大きな下落リスクも伴います。特定のテーマや国に集中投資するファンドは価格変動が激しく、長期的な資産形成には向かないケースもあります。地道に積み立て・分散投資を継続することが、現実的な選択肢のひとつです。
長期運用でリスクを平準化する
金融庁の資料によれば、過去のデータに基づくと、積立・分散投資を20年間継続した場合には、保有期間が短いケースに比べて元本割れの発生頻度が大きく低下し、年率2〜8%程度のレンジに収れんする傾向が示されています。投資信託であるS&P500単独でも、保有期間が長ければ長いほどリスクは低下する傾向がありますが、それだけでは不十分な場合もあります。ライフプランに合った「出口戦略」も含めて考えることが重要です。
※上記は金融庁「つみたてNISA Meetup スライド/『人生100年時代における資産形成』」等で公表された過去の試算(1985年〜2020年の国内外株式・債券への分散投資・毎月同額積立を前提とした保有期間別の年率リターン分布)に基づくもので、算出時点(2021年公表データ)の過去実績をもとにしたシミュレーションです。あくまでもシミュレーションであり、将来の運用成果を保証するものではありません。市場環境によっては20年以上の保有でも元本割れが生じる可能性があります。
リスクを抑えるための投資信託の選び方
S&P500を含む投資信託を選ぶ際には、以下の5つのポイントを意識しましょう。
手数料(信託報酬)が低いものを選ぶ
保有期間中ずっと発生し続ける「信託報酬」は、わずかな差でも長期的なリターンに大きな影響を与えます。同じ指数に連動するファンドなら、信託報酬が低い方を選ぶのが基本です。
過去の運用実績を長期で確認する
直近1年だけのリターンではなく、5年・10年以上の長期実績を参考にしましょう。下落局面からの回復力なども、選ぶ際の判断材料になります。
純資産残高が右肩上がりかどうかを見る
多くの投資家から支持されている投資信託は、純資産残高が安定して増加する傾向があります。純資産が少なすぎたり減少し続けているファンドは、繰上償還のリスクもあるため注意が必要です。
投資対象のリスク・リターンを理解する
投資信託のS&P500は米国株式100%のファンドのため、全世界株式と比べてリスクが高い傾向があります。自分のリスク許容度に合わせて、債券型や全世界株式型と組み合わせてポートフォリオを組むことも大切です。
分配金は「再投資型」を選ぶ
利益を都度受取る「受取り型」ではなく、再投資に回す「再投資型」を選ぶことで、複利効果が働き、効率的な資産形成が期待できます。長期的な資産形成を目的とするなら、再投資型が基本です。
年代別・投資信託S&P500を活用した投資信託の選び方
投資信託の活用方法は、年代(ライフステージ)によって大きく異なります。
20代・30代の場合
20代・30代は定年まで30〜40年の運用期間を確保できます。短期的に資産が大きく下落しても、時間をかけて回復・成長を待てる余裕があるため、S&P500のような株式型の投資信託で積極的に資産を増やす戦略が合理的です。NISAのつみたて投資枠を活用して、毎月一定額をコツコツ積み立てる「ドルコスト平均法」で、時間を味方につけた複利効果を活かしましょう。
ただし、投資信託のS&P500のみに集中投資するのではなく、全世界株式ファンドとの組み合わせや、地域・業種の分散も視野に入れると、より安定した運用が期待できます。
40代・50代の場合
40代・50代になると、老後や子どもの学費など、資金が必要になるときが近づいてきます。20代・30代ほど大きなリスクは取りにくくなるため、積極的な成長を狙いながらも「守り」のバランスを意識することが大切です。
資産の6〜7割を株式ファンド(S&P500や全世界株式)で成長を狙い、残り3〜4割を債券ファンドや貯蓄型保険など、値動きが比較的安定した商品で守る、というポートフォリオが一つの目安になります。特に50代は「今ある資産を減らさないこと」を優先し、積極的なリスクの取り方は慎重に検討しましょう。
また、この年代では定期的なリバランス(資産比率の見直し)が重要です。株高で株式比率が上がりすぎた場合、一部を売却して債券などに移すことで、リスクを適正な範囲に保ちながら運用を継続できます。
わからないことがあればIFAへ相談を
「今までせっかくうまくいっていたのに・・・」
相場が急落してから後悔しても、ときすでに遅し、という状況は誰しも避けたいはずです。投資信託のS&P500は長期投資における選択肢のひとつですが、自分のライフプランやリスク許容度に合った運用方法を判断するのは、なかなか難しいものです。
「投資信託の選び方がわからない」「自分の年齢や資産状況に合ったポートフォリオを組みたい」「老後に向けてどう準備すれば良いか整理したい」、そんな疑問や不安は、ぜひ資産運用の相談先の一つとしてIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)にご相談ください。
IFAは特定の金融機関に属さない独立したアドバイザーとして、お客様のライフプランを軸に、中立的な立場から資産運用のサポートをご提供します。まずはお気軽に相談してみてはいかがでしょうか。
投資信託の取引にかかるリスク
投資信託は、商品によりその投資対象や投資方針、申込手数料等の費用が異なり、多岐にわたりますので、詳細につきましては、それぞれの投資信託の「目論見書」「目論見書補完書面」を必ずご覧ください。また、一部の投資信託には、原則として換金できない期間(クローズド期間)が設けられている場合があります。
主な投資対象が国内株式
組み入れた株式の値動きにより基準価額が上下しますので、これにより投資元本を割り込むおそれがあります。
主な投資対象が円建て公社債
金利の変動等による組み入れ債券の値動きにより基準価額が上下しますので、これにより投資元本を割り込むおそれがあります。
主な投資対象が株式・一般債にわたっており、かつ、円建て・外貨建ての両方にわたっているもの
組み入れた株式や債券の値動き、為替相場の変動等の影響により基準価額が上下しますので、これにより投資元本を割り込むおそれがあります。
投資信託の取引にかかる費用
投資信託へのご投資には、所属金融商品取引業者等およびファンドごとに設定された販売手数料および信託報酬等の諸経費等をご負担いただく場合があります。(手数料等の具体的上限額および計算方法の概要は所属金融商品取引業者等およびファンドごとに異なるため本書面では表示することができません。)
お買付時にお客様に直接ご負担いただく主な費用
「買付手数料」:所属金融商品取引業者等、ファンドによって異なります。
保有期間中に間接的にご負担いただく主な費用
「ファンドの管理費用(含む信託報酬)」:ファンドによって異なります。
ご換金時にお客様に直接ご負担いただく主な費用
「信託財産留保額」「換金手数料」:ファンドによって異なります。
買付・換金手数料、ファンドの管理費用(含む信託報酬)、信託財産留保額以外にお客様にご負担いただく「その他の費用・手数料等」には、信託財産にかかる監査報酬、信託財産にかかる租税、信託事務の処理に関する諸費用、組入有価証券の売買委託手数料、外貨建資産の保管等に要する費用、受託会社の立替えた立替金の利息等がありますが、詳細につきましては「目論見書」で必ずご確認いただきますようお願いいたします。
また、「その他の費用・手数料等」については、資産規模や運用状況によって変動したり、保有期間によって異なったりしますので、事前に料率や上限額を表示することはできません。
各商品のお取引にあたっては、当該商品の目論見書をお渡ししますので必ず内容をご確認のうえ、ご自身でご判断ください。