2024.07.26
「老後資産4,000万円不足」は本当? 必要な老後資産額の計算方法
ニュース等で最近よく目にする「老後資産4,000万円不足問題」。いつの間にか2,000万円から4,000万円に変わっていると思った方も多いのではないでしょうか?
最近話題になっている「老後4,000万円不足問題」は、「老後資金2,000万円不足問題」をもとに、仮に3.5%の物価上昇が続いた場合のシミュレーションをした結果です。総務省が発表している2023年平均の全国消費者物価指数は前年比3.1%上昇となっているため、あながち現実離れした数字ではありません。3.5%の物価上昇が続いた場合、10年後には老後資金の目標が2,000万円から2,821万円となり、さらに10年後には4,000万円に達する計算になります。
※上記は、老後資金の目安2,000万円に対して年率3.5%の複利で物価が上昇し続けた場合の試算です(計算式:2,000万円×(1+0.035)の10乗≒2,821万円/2,000万円×(1+0.035)の20乗≒3,980万円)。物価上昇率3.1%は総務省統計局「2020年基準消費者物価指数 全国 2023年平均」(基準日:2024年1月19日公表)を参照しています。あくまでもシミュレーションであり、将来の物価上昇率や運用成果を保証するものではありません。
特に独身の方にとっては、夫婦世帯とは違い、お互いの収入や年金を補い合うことができないため、より一層しっかりとした準備が求められます。このコラムでは「各ご家庭の必要老後資産額の計算方法」と「今からできる対策術」をご紹介していきます。
必要老後資産額の計算方法について
まずは、支出と収入を計算しましょう。その後、必要老後資産額の計算をしていきます。
支出について
総務省統計局のデータ(総務省統計局「家計調査 家計収支編 2023年」)を参照すると、老後に必要な生活費は、独身者で約15.5万円、夫婦2人で約26.8万円という結果になっています。
また、生命保険文化センターが発表している夫婦2人で老後生活を送るうえでの最低日常生活費は月額で平均23.2万円となっています。ゆとりある老後生活を送る場合は、最低日常生活費以外に必要な金額は平均14.8万円となっており、「最低日常生活費」と「ゆとりのための上乗せ額」を合計した「ゆとりある老後生活費」は平均で37.9万円となっています(出典:生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」)。
独身者の場合も、生活費の内訳を正確に把握しておくことが重要です。下記の項目を参考に支出を計算するとよいでしょう。
- 食費
- 住居費
- 水道、光熱費
- 家具、家事用品
- 被服、履物
- 保健、医療
- 交通、通信
- 教育
- 教養、娯楽
- その他支出
- 税金、保険料
収入について
主な老後の収入として挙げられるのは年金と退職金になります。それぞれの平均額は下記のとおりです。
年金
厚生労働省の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、年金受給額の平均は、自営業やフリーランス等で国民年金のみの場合は月5万6,428円、会社員や公務員等で厚生年金に加入していた場合は月14万4,982円となっています。厚生労働省の「公的年金シミュレーター」で試算してみるのもよいでしょう。
退職金
東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年度版)」によると、退職金は大学卒の場合で1,091万8,000円、高校卒の場合は994万円となっています。また、100〜299人の企業規模の都内中小企業の場合、退職金は大学卒で1,323万円、高校卒で1,204万円となっています。
老後の必要資産額の計算方法
下記の計算式で計算していきます。
先ほどご紹介した方法で算出された支出と収入を上記計算式に入れて必要資産額を計算します。
計算例:会社員のご主人と専業主婦の奥様のご夫婦の場合
生命保険文化センターが発表している夫婦2人での「最低日常生活費」は月額平均23.2万円を支出に入れます。収入は厚生年金の月14万4,982円(ご主人)と国民年金の月5万6,428円(奥様)を合計した20.1万円を収入に入れます。
この場合、930万円が老後までに必要な資産額です。ただし、上記は最低日常生活費での計算ですので、「ゆとりある老後生活費」の平均37.9万円で計算すると
ゆとりある老後の生活を送るには、5,340万円が老後までに必要な資産額となります。
計算例:会社員で独身の場合
独身者の場合、収入を支え合うパートナーがいない分、より自分自身でしっかりと老後資金を準備しておく必要があります。
総務省統計局のデータによる独身者の月々の生活費の平均である15.5万円を支出に入れます。収入は会社員として厚生年金に加入していた場合の月14万4,982円を収入に入れます。
一見少ない金額に見えますが、これは最低限の生活費での試算です。独身者の場合、医療費や介護費は全額自己負担となる可能性が高く、また賃貸にお住まいの場合は家賃が老後も継続してかかります。仮に月6万円の家賃が25年間かかるとすれば、それだけで1,800万円が必要になります。
ゆとりある生活費として月25万円で計算すると
さらに住居費(賃貸の場合)や突発的な医療・介護費用を加味すると、独身者は2,500万円〜4,000万円程度を目安に老後資金を準備しておくのが安心です。老後4,000万円問題が独身者にとって特に切実である理由が、この計算からもよくわかります。
今から考えていく対策術
家計の見直し
無駄な支出がないか見直してみましょう。固定費の中でも通信費やサブスクリプションサービスは、気がつかないうちに積み重なっているケースが多くあります。月々の固定費を1万円削減できれば、25年間で300万円の節約につながります。まずは現在の家計を「見える化」し、優先度の低い支出から順に整理していくことが大切です。そのうえで節約できるところは節約し、貯蓄に回せる金額を少しずつ増やしていきましょう。
住宅ローンを早めに返済する
住宅ローンを抱えている方は、ボーナスなどを活用した繰り上げ返済を検討しましょう。繰り上げ返済によって利息の支払いを減らすことができ、老後までのローン残高を早期に圧縮できます。また、老後の住まいについても早めに検討しておくと安心です。特に独身の方は、高齢になってからの賃貸契約が難しくなるケースもあるため、持ち家か賃貸かの選択も含めて、早い段階から住まい計画を立てることが重要です。老後に向けた住宅費の見通しを明確にしておくことで、必要な老後資金の額も正確に把握できます。
「健康維持」と「収入アップ」を心がける
健康的な生活を心がけ、病気による治療費や入院費がかからないようにしましょう。特に独身者の場合、病気やけがの際にサポートしてくれる家族がいないため、医療費が思わぬ出費につながることがあります。定期的な健康診断や適度な運動を習慣化することで、医療費リスクを抑えることができます。また、スキルアップや副業などで収入を増やすことも、老後資金の準備に直結します。働けるうちに収入を増やしておくことが、将来の安心につながります。
余ったお金で資産運用をする
NISAなど資産運用に関する制度が日本では整備されています。月々の余ったお金や5年以上使う予定のない資産をNISA等で運用し、できるだけ将来増やしていける状態を作りましょう。投資信託を活用した長期・分散投資は、老後資金の形成において有効な手段のひとつです。独身者の場合、自分自身でしっかりと資産運用の知識を身につけ、計画的に取り組むことが特に重要になります。まずは少額から始めて、投資の感覚を掴んでいくことをおすすめします。
退職金・確定拠出年金には手を出さない
退職金や確定拠出年金等のまとまったお金が入ってきた場合でも、将来のために貯蓄しておくか、資産運用に回しましょう。まとまった資金が入るとつい大きな買いものや旅行に使いたくなりますが、老後の生活基盤を守るためにも、退職金は「老後のための資金」として切り分けて管理することが大切です。特に独身者は自分一人で老後の生活費をまかなう必要があるため、この原則を守ることが長期的な生活の安心感につながります。
できるだけ長く働く
十分な老後資産を準備できそうにない方は、可能な限り長く働くことを検討しましょう。定年後も再雇用や再就職で収入を確保することで、老後資産の取り崩しを遅らせることができます。仮に65歳から70歳まで働くことで、年金の繰り下げ受給により受給額を増やすことが可能です(65歳を基準に70歳まで5年間繰り下げた場合、1カ月あたり0.7%増額×60カ月=42%の増額。※出典:厚生労働省「年金の繰下げ受給」、2022年4月1日以降の制度に基づく)。独身者にとっては、健康寿命を延ばして長く社会と関わり続けることが、経済的な安心だけでなく、精神的な充実にもつながります。
5,000万円を準備するための具体例
ご家庭内で余剰資産がない方は、家計の見直しを行ってなるべく多くのお金を運用に回していきましょう。また、余剰資産がある方はなるべく早くNISAを活用して資産運用をしていきましょう。具体的な手法は次のとおりです。
50歳の独身者が月々の支出を見直し、月11万円を捻出できた場合
NISAつみたて投資枠とNISA成長投資枠を利用し、利回り6%(年率・複利)の投資信託に月11万円×20年間積立した場合
| 元本 | 2,640万円 |
|---|---|
| 運用収益 | 2,467万円 |
| 合計 | 5,107万円 |
50歳の独身者が預貯金に預けている1,800万円を資産運用に回した場合
NISAつみたて投資枠とNISA成長投資枠を利用し、利回り6%(年率・複利)の投資信託に月30万円×5年積立し、その後15年据置した場合
| 元本 | 1,800万円 |
|---|---|
| 運用収益 | 2,936万円 |
| 合計 | 5,039万円 |
※上記シミュレーションは、年率6%の複利運用を前提に、月次複利で積立・据置を計算したものです(税金・手数料は考慮していません)。基準日:2024年12月時点。利回り6%は過去20年の全世界株式インデックスの長期平均リターンを参考にした仮定値であり、特定の商品の将来成果を示すものではありません。あくまでもシミュレーションであり、将来の運用成果を保証するものではありません。市場環境により元本割れが生じる可能性があります。
老後資金を相談すべき人の特徴
老後資金の準備は、知識や情報があれば自分でもある程度進められますが、状況が複雑になるとファイナンシャルプランナー(FP)やIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)など、金融に関する専門知識を持つアドバイザーのサポートが大きな助けになります。特に独身者は、夫婦で相談しながら進める環境がないため、信頼できる相談相手を早めに見つけておくことが重要です。以下のような状況に当てはまる方は、ぜひ積極的に相談を検討してみてください。
毎月の家計を第三者の目線で整理したい人
「なんとなく節約はしているけど、本当に正しい方向に進んでいるのかわからない」という方は、家計相談の実績があるFP等のアドバイザーに家計全体を見直してもらうのがおすすめです。毎月の固定費・変動費のバランスや、保険料・通信費などの見直しポイントを客観的な視点でアドバイスしてもらうことで、これまで気づかなかった改善点が見つかることがあります。自分では「これが限界」と思っていた節約額が、第三者のアドバイスで大きく変わるケースも少なくありません。まず現状を整理して持ち込むだけでも、相談の価値は十分あります。
介護・相続の備えが不安な人
独身者にとって、老後の介護や相続は特にデリケートな問題です。夫婦であれば配偶者が意思決定のサポートをしてくれる場面でも、独身者は自分一人で備えなければなりません。公的介護保険の活用方法や民間の介護保険の選び方、さらには財産の管理・承継をどのように設計するかは、税理士・司法書士・FPなど、関連分野の知識を持つアドバイザーに相談することで整理しやすくなります。「誰に財産を残すのか」「万が一の際に誰に連絡が行くのか」といった点を早めに整理しておくことで、将来の不安を大きく軽減できます。生前贈与や遺言書の作成なども含め、早い段階から相談しておくことをおすすめします。
自分に合った資産運用の方針を見つけたい人
「投資に興味はあるけど、何から始めればいいかわからない」「NISAやiDeCoは始めているが、自分の運用方針が正しいのか不安」という方は、資産運用の相談経験が豊富なアドバイザーに相談することで、自分のリスク許容度やライフプランに合った投資戦略を立てることができます。
特に老後資金は10年・20年単位の長期運用が基本となるため、感覚的な判断ではなく、体系的な計画に基づいて取り組むことが重要です。こうした相談先として近年注目されているのが、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)です。IFAは特定の金融機関に属さない独立した立場から、中立的に資産運用のアドバイスを行いますので、自分の状況に合わせた商品・戦略を提案してもらいやすい点が特徴のひとつです。独身者のように、自分自身で老後のお金を守り育てる必要がある方こそ、IFAのようなアドバイザーとの長期的なパートナーシップが、老後の安心につながります。
住宅費と老後資金のバランスに悩んでいる人
すでに住宅ローンを抱えている方や、これから住宅購入を検討している方は、老後に向けた返済計画をFPやIFA等のアドバイザーと見直すことが大切です。繰り上げ返済のタイミングや方法によっては、長期的に支払う利息を大きく抑えられる可能性があります。また、独身者が老後の住まいを選ぶ際には、バリアフリー対応の有無や医療機関・介護施設へのアクセスなども重要な判断基準となります。住宅費は老後資金の中でも大きな割合を占めるため、早い段階でアドバイザーに相談しながら、無理のない住宅費の計画を立てることが、老後の安定した生活につながります。
老後も資金に悩んだらお金のアドバイザーに相談しよう
「老後資金はいくら必要なのか試算して欲しい」「どんな方法で準備するのが自分には合っているのか?」「お金の勉強はしたいけど、時間がない」と悩んでいる人は、FPやIFAなど、お金に関する知識と実務経験を持つアドバイザーに相談するのがおすすめです。
相談したい方は下記をクリック
まとめ
いかがでしたでしょうか? ご自身の家庭に必要な老後資産額は算出できましたか? また、将来5,000万円を準備する具体的なプランは計画できましたか?
独身者にとっての老後資金準備は、夫婦世帯に比べて自己責任の比重が高くなります。だからこそ、早い段階から計画を立て、NISAやiDeCoを活用した資産形成を始めることが大切です。老後生活への対策は後回しになりがちですが、事前に考えて計画を立てておくことで、老後を迎えた際の安心感が大きく変わります。
老後資金の計画を立てる際には、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)などの有資格アドバイザーに相談することも効果的です。アドバイザーと一緒に具体的なライフプランを設計することで、将来への安心感を得やすくなります。まずは一度、気軽に相談してみてはいかがでしょうか。
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